| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-066

温帯19樹種間の当年枝形態、当年枝資源配分、樹冠形の比較

*齊藤わか,長田典之,北山兼弘

樹形は種によって異なり、遷移初期種は樹高成長を優先する細長い樹冠、後期種は側方成長を優先する幅広の樹冠を作る。また高木種は細長い樹冠になり、低木種は幅広な樹冠になる。このような樹木の成長過程を推定する方法としてアロメトリー曲線が用いられる。しかしこれは多数の個体を使った推定法なので、実際の樹冠の形成過程を知ることはできない。アロメトリーから推定される成長過程は、当年枝の伸長パターンで説明できる可能性が高い。だが枝の枯死や損傷など他の要因が樹形に影響している可能性もある。よって、当年枝の伸長パターンとアロメトリーが示す成長過程が一致するかどうかを確かめる必要がある。そこで、遷移初期種-後期種、高木種-低木種からなる19種の幼樹を対象に、樹形と当年枝の伸長パターンが一致するか調べた。幼樹を対象としたのは成木に比べて枯死や損傷の影響が少ないので、伸長パターンと樹形が一致する可能性が高いためである。伸長パターンを調べるため、樹冠頂端の当年枝の長さと角度から、樹高伸長量を計算した。同様に、樹冠側方の当年枝から樹冠幅伸長量を計算した。また当年枝の伸長量を決定する総バイオマス量、枝へのバイオマス配分、バイオマス量も調べ、伸長パターンに影響を与える要因が種によってどう違うか明らかにすることを試みた。

樹形には遷移初期・後期や低木・高木に典型的な違いが見られなかった。伸長パターン(樹高伸長量/樹冠幅伸長量)は高木で高く低木で低かった。遷移系列での違いは見られなかった。種ごとの樹冠形状比の順位と伸長パターンの順位を比較したところ相関は見られなかった。樹形と伸長パターンは一致しなかったといえる。当年枝の総バイオマス量、枝へのバイオマス配分、バイオマス量あたりの長さは種間で大きく異なっていた。各要因がどの種で大きな影響を与えているか、伸長パターンと関係するのか詳しく議論する。


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