| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-085

衛星リモートセンシングと有効積算温度を用いた将来の展葉時期の予測

*羽田野真由美 (筑波大・生物資源), 本岡毅 (JAXA), 奈佐原顕郎 (筑波大・生命環境)

近年,地球温暖化にともなって植物の示す季節現象が変化しており,落葉樹の展葉 (葉がひらく) 日の早期化が数多く報告されている.展葉日の早期化は光合成期間の長期化および一次生産量の増加に寄与するので,将来の陸域一次生産量を予測するためにも展葉時期の予測は重要である.そこで,本研究は将来の日本の展葉時期を予測することを目的とした.

展葉モデルには,暖温帯林や冷温帯林において展葉日との相関が高い有効積算温度という指標を用いた.このモデルに基づき,予測展葉日は将来の有効積算温度が各地点での閾値を超えた日であると仮定した.将来の気温は高解像度MIROC (Model for Interdisciplinary Research On Climate) が,IPCC温室効果ガス排出シナリオ (A1BとB1) に基づいて計算した値を用いた.また展葉日のデータは,広域を定期的に観測することができる衛星リモートセンシングを用いた.具体的には人工衛星Terra搭載のMODISセンサによるMOD09A1 (空間分解能500m; 時間分解能8日程度) データを使用して本岡ら (2009) が行った展葉日のマッピング結果を使用した.

手法の有用性を検討するために,閾値の年変動を確認したところ6年間の標準偏差は,落葉樹が多く分布する地域に限って言えば小さい値 (25~80℃・day) であり,この手法の有用性が示された.予測の結果、将来の展葉日は全国的に現在 (2001~2006年平均) よりも早まり,その差はB1シナリオでは20~27日,B1シナリオでは10~17日ほどであった.地域別でみると特に北海道で早期化傾向が強く,また標高の高い地域は変化が小さかった.


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