| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-111

閉鎖的空間及びエゾシカ高密度状態が地表性昆虫の多様性に与える影響

*柳原祐一,(酪農学園大学大学院),吉田剛司,(酪農学園大・環境)

近年、爆発的なエゾシカ(Cervus nippon yesoensis)の個体数の増加に伴い、採食によって植物相への影響が顕著になっている。しかし、エゾシカの高密度状態が昆虫類に与える影響についての調査事例は少なく、閉鎖的な空間において地表性昆虫に与える影響に関する研究は更に乏しい。そこで、閉鎖的なエゾシカ高密度地域と非閉鎖的なエゾシカ高密度地域での地表性昆虫の多様度を把握し比較することにより、エゾシカの高密度状態が地表性昆虫の多様性に与える影響の考察を試みた。

調査地は、北海道虻田郡洞爺湖町に位置する洞爺湖中島と紋別郡西興部村宮の森とした。洞爺湖中島は島嶼生態系として閉鎖的なエゾシカ高密度地域である。一方で、西興部村宮の森はエゾシカ高密度地域であるが非閉鎖的な環境にある。これらの調査地において、調査プロットを植生タイプ(草地、針葉樹、広葉樹、針広混合林)で分類し、各プロットに統一サイズのプラスチック製コップを用いたピットホールトラップを20個仕掛け、設置時間は24時間以内で統一した。捕獲された地表性昆虫は、調査地及びプロットごとで多様度指数、期待種数を比較した。結果、閉鎖的なエゾシカ高密度地域では6科27種、非閉鎖的なエゾシカ高密度地域では4科27種の地表性昆虫を捕獲することができた。調査地の植生タイプで比較すると、両調査地とも針広混合林で多様度及び期待種数は高い値を示した。また、閉鎖的なエゾシカ高密度地域より、非閉鎖的なエゾシカ高密度地域の方が多様度は高い値を示す結果となった。西興部村宮の森で捕獲された地表性昆虫は均衡しており、洞爺湖中島で捕獲された地表性昆虫は不均衡であると考えられ、閉鎖的な空間においてはエゾシカの高密度状態が地表性昆虫の多様性に影響を与えていることが示唆された。


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