| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-116

さまざまな付着基盤を利用する表在性二枚貝の多様化パターン

*椿 玲未(京大・人環),亀田 勇一(京大・地環),加藤 真(京大・人環)

ウグイスガイ上科二枚貝は、岩盤や転石などの非生物基盤のみならず、刺胞動物やカイメン動物などの生物基盤も生息場所として利用する表在性二枚貝である。このような生物基盤の利用は二枚貝ではウグイスガイ上科でのみ進化しており、現在のウグイスガイ上科二枚貝の多様化の背景には生物基盤への進出があると予想される。

そこで、核遺伝子の2領域(18S,28S)を用いて分子系統解析とそれに基づく祖先形質の復元と分岐年代推定を行い、生物基盤への進出がウグイスガイ上科二枚貝の多様化にどのように関わっているかを調べた。また、ウグイスガイ上科の分類には未確定の部分も多いため、分類の再検討も行った。

分子系統解析の結果は、ウグイスガイ上科は3つの大きなクレードからなる単系統群であることが明らかになった。各クレードは現行の科分類とは対応しておらず、殻形態は系統を反映していないと示唆された。一方、属レベルでの分類は安定しており、シマウグイス属を除き、各属は単系統群であると示唆された。

祖先形質復元の結果から、ウグイスガイ上科二枚貝の祖先形質は岩盤付着性で、刺胞動物への進出は1回、カイメン動物への進出は1回あるいは2回起こったと示唆された。

また、分岐年代推定の結果からは、刺胞動物に付着する系統の多様化は、主なホストであるヤギ類の多様化とほぼ同じ時期(白亜紀後期)に起こったことが示唆された。

これらの結果から、利用する付着基盤のシフトがウグイスガイ上科二枚貝の多様化の背景にあったと考えられる。


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