| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-138

樹木の萌芽特性の種間差は何によって決まるのか?

*柴田嶺(東北大・生命),柴田銃江(森林総研東北),田中浩,正木隆(森林総研),八田芙美香(東北大・理),黒川紘子,中静透(東北大・生命)

多くの樹木は、地上部が撹乱などにより失われた際に萌芽再生する能力を持っている。萌芽発生量や元株サイズとの関係などの萌芽特性は樹種ごとに異なっている。また,萌芽には地下資源への投資が必要とされており、様々な生活史特性とトレードオフがあると考えられる。この研究では、まずそれぞれの樹種の萌芽特性と株サイズの関係を明らかにし、その上で萌芽特性に影響を及ぼしている生活史特性を探った。

調査は北茨城市小川群落保護林周辺の秋から冬に伐採された二次林で,1年目の伐採跡地および林道沿いにて行った。萌芽調査は6月から8月上旬の間に行った。落葉高木17種、落葉低木7種を対象とし、株サイズの異なる切株を1種当たり10-38個体選び、切株断面の直径と萌芽枝すべての根元直径を測定した。また、各樹種の地下貯蔵資源量の調査を12月に行った。高さ2m以下の個体を各樹種5サンプルずつ掘り起こしてNSC(デンプン+糖)の濃度を測定した。その他の生活史特性として小川試験地の森林動態データおよび葉の形質データ(LMAなど)を用いた。

親株の断面積(S)と発生萌芽断面積の合計(P)との関係をP=aSb-cS(a,b,cは定数)という式を用いて回帰することで、ある株サイズで萌芽発生量のピークを持つ曲線を得ることができ、式から萌芽能力の高さ(定数a-定数c)や萌芽能力を失うサイズなど各樹種の萌芽特性を得た。そして、各樹種の萌芽特性を目的変数、生活史特性を説明変数としてGLM解析を行った。その結果、最大サイズの小さい樹種ほど萌芽能力が高く、さらに葉が柔らかく密度の低い樹種(光要求度が高い種)ほど萌芽能力が高かった。また、萌芽能力と地下貯蔵資源の関係についても考察する予定である。


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