| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-160

ガビチョウにおけるさえずり構造の特性

*宮澤絵里,鈴木惟司(首都大・理工・生命)

ガビチョウ Garrulax canorus は中国南部等を原産とするチメドリ科の鳥で,日本では関東地方西部など一部地域で移入・野生化している.大きな声で複雑にさえずるため,中国ではさえずり鑑賞用の飼い鳥として人気があるが,ガビチョウの音声コミュニケーションに関する詳しい研究は少ない.

そこで本研究では,ガビチョウの興味深い音声利用について,今後の研究のための基礎情報を提供するため,(1) さえずりおよび他の鳴き声が使われる状況の観察,および,(2) さえずりの音声構造の解析方法の検討,を行った.観察・録音は首都大学東京南大沢キャンパス(東京都八王子市)において行った.

(1) 定期ラインセンサスおよび自動録音調査により,春・夏に比べて頻度が低い傾向があるものの,冬期(12-2月)にもさえずり活動を行っていることが分かった.また,繁殖期のつがいの行動観察から,さえずりが捕食者に対する警戒声として使われている可能性が示唆された.

さえずり以外の鳴き声では,多様な場面で使われる「ギュ」という声,オスのさえずりと同時に聞かれ,メスのみが発している可能性がある「フィーフィー」という声,つがいや群れ個体に対する警戒の合図である可能性がある小声の「ヒヨヒヨヒヨ」という声,が記録された.警戒声にはさえずり以外に,激しい「キュルルキュルル」,「ピーピーピー」,「ピルルルル」,「ギュギュ」といった声が使われていた.

(2) ガビチョウのさえずりは非常に複雑で長く,様々な構造の音要素(ノート)が使われている.標識した1歳オスのさえずりの声紋解析を行い,この個体の持つノートの種類や,ノートの組み合わせ(シラブル)のパターン等を記載した.その上で,個体間や状況(前述の警戒声としてのさえずり等)による違いを比較するために適切な解析方法を検討する.


日本生態学会