| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-162

マガンの日周行動における分布変化と小麦食害問題

*熊谷麻梨子(酪農学園大・環境),佐藤舞子(酪農学園大院・酪農),牛山克己(宮島沼水鳥・湿地センター),赤坂猛(酪農学園大・環境)

北海道美唄市にある宮島沼は,毎年春と秋にマガン(Anser albifrons)が飛来する渡りの中継地であり,宮島沼周辺の農地ではマガンによる春の小麦食害が深刻な問題となっている.食害の発生にはマガンの日周行動における採食地選択が深く関係している可能性があるが,日周行動に関連付けた先行研究はない.したがって本研究では,マガンによる小麦食害の発生パターンを日周行動(午前・午後)における採食地利用の観点から明らかにしたい.

2010年4月上旬~5月上旬に,宮島沼から半径8km圏内の農地にセンサスルートを設定し,車でルートを周った.その際に,マガンを発見次第,個体数,圃場の種類(田圃・小麦)を記録した.

季節的な採食地利用の変化として, まだ農地に雪が残る4月上旬は午前・午後ともに雪上と田圃に分布するマガンが多かったが,飛来数が増加する4月下旬から5月上旬にかけて小麦畑を利用するマガンが増加した.この原因として,飛来期の後半になるにつれ田圃の食物資源(落ち籾)が減少し,小麦を採食するマガンが増加するためだと考えられる. また,飛来期後半における午前と午後の採食地利用を比較すると,午後の方が小麦を採食するマガンが多いことが判明した.さらに,午前に比べ午後の方が広範囲の圃場で採食しており、時間帯によって採食地の空間分布にも変化があることがわかった.これらマガンの日周行動における採食地利用と小麦食害の発生パターンについて、マガンの採食生態の観点から考察し、小麦食害問題に対する提言を行う。


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