| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-207

腐肉食性オオヒラタシデムシの産卵戦術:給餌間隔と産下卵数

*滝 若菜 ・ 渡辺 守 (筑波大・院・生命環境)

腐肉食性のオオヒラタシデムシは、小型脊椎動物や無脊椎動物の死骸を主とする腐肉を、成虫と幼虫の餌資源として利用している。この出現は、時間的・空間的に予測不可能で、1回あたりの腐肉の量も少ないため、餌として利用できる期間は短い。したがって、本種のメスは資源の量と出現頻度に依存した産卵戦略をとっているはずである。野外において、産卵季節(6月~8月)以前に捕獲したメスは、体内で卵を発育させていなかった。これらのメスに、鳥のひき肉を毎日1g与えて2週間飼育したところ、体内で卵の発育が認められた。そこで、その後、ひき肉を与える間隔を毎日と4日おき、7日おきに設定して1ヶ月間飼育し、産下卵数を記録した。飼育実験終了後、全てのメスを解剖し、体内に保有していた成熟卵数と未成熟卵数を数え、脂肪体量を4段階に分けて記録した。実験期間中、毎日餌を与えた個体で30%、4日おきの個体で71%、7日おきの個体で50%が土の中に潜ったまま産卵しなかった。これらのメスの脂肪体量は給餌間隔にかかわらず一定であり、これを産卵したメスと比べると、毎日餌を与えた個体では差がなかったが、4日おきと7日おきに餌を与えた個体では、産卵メスの脂肪体量が有意に減少していた。産卵メスの総産下卵数は、毎日餌を与えた個体で22.6±8.0(n=9)個、4日おきの個体で41.5±6.3(n=2)個、7日おきの個体で16.0±5.0(n=2)個であった。これらの結果より、餌への遭遇頻度と産卵頻度との関係について考察する。


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