| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-221

コアシナガバチのコロニー内における巣材の略奪行動

*山崎和久,土田浩治(岐阜大院・昆虫生態)

社会性昆虫では一般的に女王のみが繁殖を行い、ワーカーとの間に繁殖分業が見られる。多くの種でワーカーは潜在的に繁殖能力を持つが、女王存在下では女王由来の化学物質や個体間の優劣行動によりワーカー繁殖が抑制されている。比較的原始的な社会構造を持つアシナガバチ類では、特に優劣行動が多く観察されている。女王は噛み付きや腹部を振るなどの優位行動によってワーカーの内分泌に生理的な影響を与え、その卵巣発達や産卵行動を抑制して繁殖を独占すると考えられている。

演者らはコアシナガバチにおいて優劣行動を含めた各個体の行動を解析し、噛み付き行動に2つの型があることを明らかにした。本種では、(1)巣上で静止または歩き回る劣位個体に対する噛み付き行動と(2)巣材を持って帰巣した個体に対する噛み付きが確認された。(2)の噛み付きは行動様式やその後に巣材の略奪が行われるという点で、(1)の噛み付き行動と異なっていた。一方で、どちらの型の噛み付き行動においても、噛み付かれた個体が劣位行動をとるという点において共通していた。

女王による噛み付きの78.3%は巣材を持ち帰ったワーカーに対する(2)の型であった。この型の噛み付きや巣材の略奪は女王存在下のコロニーでは女王に限られ、人為的に女王を除去した孤児コロニーでは優位の産卵ワーカーにも稀に見られた。女王は巣内で育房作りの内役を行ったが、そのための巣材を自らの外役により得ることは少なく、89.6%はワーカーからの略奪により得られた。また、女王は巣材を育房の新設に使う頻度がワーカーより有意に高く、既存の育房の拡張に使う頻度は低かった。

以上の結果から、本種の女王の噛み付き行動は巣材を略奪するために行われると考えられた。女王は巣材をワーカーからの略奪に頼ることで外敵に襲われる危険を回避し、育房の新設を専門的に行うことで産卵を独占していると考えられた。


日本生態学会