| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-271

分散パターン解明を目的としたスカシバガ類の生体内微量元素分析

*工藤誠也(弘前大院・農生), 渡邉泉(東京農工大・農), 東信行(弘前大・農生)

スカシバガ類(Sesiidae)はハチに擬態したガの仲間であり、幼虫は枝・茎に穿孔してその内部で育つ。穿孔性ゆえに散布農薬は利き難く、食害によって植物体を極端に衰弱させるため、一部のスカシバガ類は深刻な農業害虫とされている。また、2005年に北海道で初めて発見された外来種スグリコスカシバ(Synanthedon tipuliformis)はスグリ類の世界的農業害虫であり、近年本州でも分布を広げているため、対策が急がれている。現在、スカシバガ類各種に合成性フェロモンを利用した防除方策が試みられているが、コスカシバ(Synanthedon hector)などの一部の種を除き十分な成果は得られていない。スカシバガ類の飛翔分散能力の高さがその一因になっているものと考えられる。

本研究は、スカシバガ類の飛翔分散パターンやその分散程度を調査するための足掛かりとして行った。スカシバガ類3種(クビアカスカシバ Toleria romanovi 、キタスカシバ Sesia yezoensis 、スグリコスカシバ)を対象に、個体全身(クビアカスカシバ・キタスカシバでは翅・脚・触角を除外)を酸分解し、誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS)にて個体毎の体内元素濃度を定量した。そして得られたデータを利用し、産地分類を試みた。

検出された15元素(スグリコスカシバでは10元素)の体内元素濃度データを用いて正準判別分析を行った結果、3種いずれもこの手法によって産地分類できることが分かった。3kmほどしか離れていない地点間でも判別できており、畑など小区画レベルでの違いが示唆された。


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