| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-299

チャネルの異なる雑食とギルド内捕食を含む群集の構造と安定性

*森田由香里(大阪府立大院・理),難波利幸(大阪府立大院・理)

複数の栄養段階から資源を得る雑食を、Coll & Guershon (2002)は,同じ食物連鎖の中で複数の資源を利用するものと,異なる連鎖に属する複数の資源を利用するものとに分類した。同じチャネル内の雑食であるギルド内捕食(IntraGuild Predation)系では,IG被食者がIG捕食者の資源利用効率を上回ることが共存の必要条件であることが知られている(Holt & Polis 1997)。本研究では,3種食物連鎖と3種IGP系に,捕食者が食うチャネルの異なる植物(以下、代替資源)を加えることが,群集構造と安定性に及ぼす影響を調べた。

生産性が低く捕食者存続が難しい環境では,代替資源が捕食者の存続を助けることがある。しかし,植物(基底資源)-植食者-捕食者からなる食物連鎖と代替資源では,植食者と代替資源の間には見かけの競争が生じる。また,代替資源は捕食者を増やして植物に正の効果を与える栄養カスケードを強めるのに対し,植物は捕食者を増やして代替資源への植食圧を高めるので,植物が代替資源を「食う」見かけの捕食が生じる。したがって,この系では,代替資源または植食者の絶滅が起こることが多い。IGP系では,植物と代替資源の関係に,見かけの競争の要素も加わる。捕食者の基底資源消費率が大きくなるにともない,植食者と捕食者との消費型競争,代替資源と植物の見かけの競争が強まり,植食者と代替資源は存続しにくくなる。その結果,同じチャネル内の雑食であるギルド内捕食と,異なるチャネルの雑食が併存する場合は稀となる。

また、捕食者の基底資源利用効率が極端に低い場合,3種IGP系は不安定になり振動が起こるが,チャネルの異なる資源を加えても安定性は変わらない。したがって,チャネルの異なる雑食は,捕食者を助け,間接効果によって群集構造を変えるが,安定性への影響は小さいかもしれない。


日本生態学会