| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


一般講演(ポスター発表) P3-305

個体間競争から考察する種間競争の動態

穴澤正宏(東北工大・工)

離散時間の個体群動態モデルは,種間相互作用を含んだモデルの場合も含めて,季節的な繁殖を行う生物の個体群動態をモデル化するのによく利用される。様々な離散時間モデルが使われるが,通常,これらは現象論的なモデルとして導入されることが多い。このような現象論的なモデルの背景にはどのような個体レベルの過程が潜んでいるのか,また,様々な現象論的なモデルの間の違いは,個体レベルの過程のどのような違いに起因しているのか。これらを理解するには,個体群動態モデルを個体レベルの過程に基づきボトムアップ的に導出してみることが有効である。著者の最近の研究では,1個体群中の個体間での資源をめぐる競争を具体的に考察することで,離散時間の個体群動態モデルをボトムアップ的に導出した。それにより,スクランブル型,コンテスト型および両者の中間的な競争型に対応する様々な個体群モデルの関係を統一的に理解することができた。

今回の研究では,上の研究を発展させ,2種の個体群間の競争モデルをボトムアップ的に導出した。すなわち,2種の個体が同じ資源をめぐり競争している状況を仮定し,個体間での資源をめぐる競争と個体の空間分布についての考察から,種間競争モデルの導出を行った。各生物種はスクランブル型,コンテスト型,中間型のいずれかの競争型をとると仮定し,2生物種の競争型の様々な組み合わせに対して,様々な種間競争モデルが導出できた。また,導出された種間競争モデルのいくつかに対して2種の共存や競争排除について調べたところ,個体の空間分布の種類に違いにより,2種の共存のし易さは大きく異なることが分かった。


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