| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


シンポジウム S06-5

トキを象徴種とした農地の再生

関島 恒夫(新潟大院・自然科学)

2008年9月25日、新潟県佐渡島において、わが国で一度野生絶滅したトキが定着に向けて再度放鳥された。再導入されたトキは、環境省が期待した小佐渡東部地域には定着せず、佐渡島内を広域に分散した。われわれは上記のような事態を予め想定し、放鳥以前から佐渡島全域を視野に入れた自然再生の重要性を唱え、餌生物量およびトキの生態特性に基づく自然再生シナリオの立案を目指してきた。具体的な作業手順としては、佐渡島における自然基盤情報と社会基盤情報を広域に集積・統合したGISデータベースを構築した上で、それを利用した景観解析と生物量調査に基づき、トキの主要な餌生物である両生類、ドジョウ、バッタ類などの全島的餌資源マップと中国産トキの営巣適地情報から推定した好適営巣地マップを作成・統合することで、景観スケールにおいて自然再生を効果的に進めるべき再生重点候補地を抽出した。次に、抽出された再生重点候補地に対し、有効性を検証したさまざまな農地・河川・森林再生技術を、立地環境あるいは集落状況に応じて選択的に導入することにより、景観スケールから局所スケールに配慮した具体的な再生シナリオを提示した。われわれは、立案した自然再生シナリオが速やかに実現される体制を整備するため、これまで農地・河川に関わる行政連携体制の強化を図ってきた。本講演では、特に農地を例に、再生手続きの概要および、再生を推進する上で鍵となる幾つかの取り組み事例を紹介する。


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