| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


企画集会 T04-3

シカ・イノシシ保護管理のための意思決定支援システムの構築

*岸本康誉, 坂田宏志(兵庫県大学)

シカやイノシの個体数増加に伴う農林業被害の深刻化に対して、都道府県では、特定鳥獣保護管理計画を策定し、様々な調査が実施されている。しかし、被害や個体数の動向把握のための調査フォーマットや個体数推定方法は都道府県によって異なり、その精度は一定していない。また、個体数推定そのものが困難な場合もあることに加え、将来予測については技術的な問題もある。その結果、各都道府県で取得されているモニタリングデータがシカやイノシシの管理のための意思決定につながっていない場合が多い。

これは、技術者の不足や、解析に必要なデータを継続的に取得する仕組みがないことに加え、データ収集と解析から、意思決定支援のために有効なアプトプットの作成までのプロセスが十分に確立していないことが大きな理由の一つである。

これらの状況を改善するために、演者らは、行政レベルでの意思決定を支援するための有効な指標や分析手法を確立するとともに、データ収集から分析、将来予測、意思決定までの一連のプロセスを再構築し、都道府県レベルで実施可能なシステムを開発している。

開発にあたって、農業集落単位の被害や、生息状況を推定するために必要な狩猟や有害捕獲の共通調査フォーマットの確立し、これらの一括入力機能を備えた自動入力システムを構築している。また、シカについては、目撃効率や糞塊密度等の複数の密度指標を用いた状態空間モデルを構築した個体数推定と将来予測の手法を開発した。さらに、捕獲計画を設定したシナリオ分析や、密度と被害程度との関係解析による管理目標値の設定などの意思決定支援のためのコンテンツを開発している。これらの全作業をシステム化した支援ソフトウェアパッケージを開発することにより、都道府県における分析・企画立案の能力と効率の向上が期待できる。


日本生態学会