| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


企画集会 T06-1

MAB計画の概要および本集会の趣旨説明

若松伸彦(横国大・環境情報)

「人間と生物圏(MAB)」計画の柱はUNESCOが1970年から始めた保全と利用の調和を図る国際的な取り組みで,その最も大きな柱は「生物圏保存地域(Biosphere Reserve; BR, 通称 ユネスコ・エコパーク)」の指定である.同じUNESCOの世界自然遺産が手付かずの自然を守ることを原則とするのに対し,BRは自然環境の保全と文化的多様性の維持や地域社会の発展を通じた原生的な自然環境の保全を目的としている.そのため,自然度の高い「核心地域」,「緩衝地帯」とともに,人の利用も可能な「移行地域」を設定するゾーニングシステムを採用している.

1976年に最初のBRが登録されて以降,その国際ネットワークは発展を続けており,現在は129の国と地域の564カ所が登録されている.世界に二つとない原生自然の希少価値を認知する趣旨の世界自然遺産の新規登録が極めて厳しくなりつつあるのに対し,BRは海外では順調に登録地を増やし続けている.ネットワークでは様々な科学情報と管理手法を提供しており,その躍進は世界各地で保全と利用の両立を図る取り組みが組織的に進んでいることを意味している.MAB計画の理念は日本が主張している「自然との共生」の理念に合致しており,BRは地域の取り組みや国内での連携だけでなく,国際的な連携を図る絶好の舞台となる.本講演では,MAB計画の理念およびその歴史を紹介する.


日本生態学会