| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第58回全国大会 (2011年3月,札幌) 講演要旨


企画集会 T08-4

滋賀県による外来生物に関する取り組み:条例施行と現状調査

高倉猛(滋賀県自然環境保全課),*中井克樹(滋賀県立琵琶湖博物館)

滋賀県で最初に対策が採られた外来種問題は、琵琶湖における水草オオカナダモの大発生で、1974年のことであり、それ以来、水草刈り取り事業は国定公園管理の一環として継続されている。近年は、増殖する水草の大部分が在来種であるため、刈り取りの対象も専ら在来種だが、この事業が2007年のボタンウキクサの根絶に協力するなど、柔軟な取り組みもなされている。

琵琶湖で激増した外来魚に対する取り組みは、中井の発表で紹介する。条例に関しては、2003年に施行された「滋賀県琵琶湖のレジャー利用の適正化に関する条例」に、釣った外来魚のリリース禁止規定が盛り込まれ、釣りの手法の規制にまで踏み込んだ初めての試みとして注目を集めた。

さらに2005年の外来生物法の施行を受け、2007年には指定外来種の枠組みを規定した「ふるさと滋賀の野生動植物との共生に関する条例」が施行された。指定外来種は、県域で侵略的影響が想定されながら特定外来生物には未指定の生物から選ばれ、飼育の届出と放逐の禁止が求められる。現在15種類が指定され、環境省の要注意外来生物リストから漏れているものや国内外来種も含まれ、国の外来生物対策を地方自治体が補う役割を果たしている。

外来生物対策の効果的な遂行には、その現状把握が不可欠である。そこで、2009年度から国の緊急雇用対策支援を利用して、主要な外来生物(陸生7種、水生10種)を対象に、人間の生活圏周辺に重点を置いて全県規模の分布・生息状況を把握すべく、「エイリアン・ウォッチャーズ事業」が3ヵ年計画で始まった。アメリカザリガニ、オオキンケイギク、ホテイアオイをはじめ、身近に生息しながら具体的な分布に関する知見が限られていた外来生物について、情報が集積されつつある。


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