| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) F1-07 (Oral presentation)

維管束植物の絶滅リスクによる生物多様性ホットスポット解析

*渡邉絵里子(横国・環),林直樹(電中研),松田裕之(横国・環)

昨今,生物多様性の保全に関する学術研究や社会活動が活発化している.保全上重要な地域は,生物多様性ホットスポットとも呼ばれ,国内外においてその評価指標や地理的分布に関する研究が取り組まれている.しかし,この生物多様性ホットスポットには,「種類」,「希少性」,「危険性」の3つの概念が含まれること(矢原,2002),概念や対象種,指標によって重要な地域は地理的分布が異なる(David et al, 2005)ことが指摘されている.

本研究では,保全戦略の緊急性の観点から,「危険性」の概念に着目し,絶滅リスクによって日本全国における危険性のホットスポットを評価した。解析には、環境省2000年度版植物レッドデータブック(以下,RDB)の調査データを用いた.

解析方法を以下に示す.まず,調査データから推定した各RDB種の全国個体数N,減少率Rおよび分布区域数Lから各RDB種の平均余命Tを算出する.次に、分布区域のうちのある区域を10年保全した際の平均余命T’を算出し,その差をとって10km四方単位で集計したものを区域の保全効果Cとして評価できる(種生物学会編,2002).

ある種の平均余命:T(N,R,L)=2.709 – 4.65*ln(N )/ln(1-R )+4.559*ln(L)

保全効果:C=Σ⊿(1/T –1/T’)

解析の結果,保全効果が高い(絶滅リスクの減分が大きい)区域の面積は全国の約8%に過ぎないが,その区域が占める保全効果は日本全体で全RDB種を保全する効果の約77%に達した。

次に,対象種の生息地タイプを藤田(未発表)に則り,「湿地」,「海岸」,「河川」,「草地」,「岩場・樹幹」,「森林」の6タイプに分類し,それぞれの危険性のホットスポットを示した.さらに,絶滅リスクを独立変数、地形や景観などの環境要因を説明変数として重回帰分析を行い,各生息地タイプのホットスポットに起因する環境要因の傾向を示した.


日本生態学会