| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) H2-24 (Oral presentation)

「林床植生の管理とシジュウカラの繁殖個体数」

大堀 聰*(早稲田大・自然環境調査室),黒江 美紗子(秋田県立大・生物資源)

里山では、下刈りや落ち葉かき、萌芽更新のための皆伐が定期的に行なわれるため、林内や林床は明るかった。しかし、近年、里山ではこれらの管理作業が行われなくなったため、林床にはササや常緑稚樹が侵入し立木密度が増したり、種組成が変化した。さらに、萌芽更新の皆伐も行われなくなったため、林内空間や林床の光条件は低下した。

シジュウカラは、このような林や緑の点在する市街地に生息する鳥類である。繁殖期にはつがいを形成し、樹洞や巣箱を利用して繁殖する。秋から冬の非繁殖期は、2〜10羽くらいの群れで過ごす。樹冠部で採餌するが、冬季には林床におり、落ち葉をめくり採食する。

そこで、里山の林分管理作業の有無が、シジュウカラの冬季の個体数や繁殖つがい数にどのような影響を与えるのかを明らかにするために、シジュウカラの地上部の採餌地点と落葉の採食生物量調査を行った。調査は埼玉県所沢市早稲田大学所沢キャンパス内の林分(37ha)と、5年前から管理作業が行われている埼玉県本庄市早稲田大学本庄キャンパス内の林分(83ha)で行った。

以前から行なっている二つの調査地でのセンサス調査の結果を比較すると、林分の管理作業の停止は、シジュウカラの冬季の個体数や繁殖つがい数に負の影響をもたらしている可能性が考えられた。本研究では、1)立木密度とシジュウカラの採餌利用地点の関係 2)立木密度と潜在的餌生物量の関係を明らかにすることによって、管理作業の停止による林分構造の変化がどのようなプロセスによってシジュウカラの冬季の個体数に影響を与えているのかを検討する。


日本生態学会