| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) L2-15 (Oral presentation)

捕食者と被食者の体サイズ比のスケール依存性:その決定要因と応用

*仲澤剛史(京大・生態研), 潮雅之,近藤倫生(龍谷大・理工,JST・さきがけ)

体の大きさは食物網の構造や動態を理解する上でとても重要である。特に、捕食者と被食者の体サイズ比(Predator–Prey Mass Ratio)は複雑な食物網構造を単純に記述できる有効なパラメーターと考えられ、食物網モデルで広く使われている。一方で、PPMRを実際に定量する方法論には幾つかの課題が残っている。(1)PPMRは個体レベルから群集レベルまで様々なスケールで定義できる。(2)PPMRは種や体サイズといった個体特性に応じて変化する。これらの事象は従来の食物網モデルの仮定に反するので、そのデータ検証が必要である。本研究では、全海洋スケールで収集された魚類の胃内容組成データを用いて、PPMRのスケール依存性と決定要因という二つの問題について検討する。ここではスケールの異なる四つのPPMRを定義する。(1)種平均PPMR、(2)リンク平均PPMR、(3)捕食者個体PPMR、(4)個別リンクPPMR。まず、PPMRの実測値に見られるスケール依存性はデータの構成要素(捕食者や被食者の個体数や種数、その体サイズ)に応じて任意に規定できることを示す。さらに、四つのPPMRそれぞれについて、その値が捕食者の種特性と体サイズにどう関係しているのかをAICを用いて評価する。その結果、捕食者個体PPMRと個別リンクPPMRを最も良く説明するシナリオは種特性と体サイズの両方も含む一方で、種平均PPMRとリンク平均PPMRの最適シナリオはサンプリング場所で異なっていて不明瞭だった。これらの結果は、種特性と個体サイズの両方の効果を考慮に入れつつ、個体レベルの捕食相互作用に基づいて食物網構造を記述することが望ましいことを示唆する。


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