| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) L2-19 (Oral presentation)

群集生物量の温暖化応答:経験的観察と仮説

占部城太郎(東北大・生命)

地球温暖化に対する生物群集の応答予測はここ20年来、生態学の大きな研究テーマになっている。例えば、温暖化に伴う生物種の分布拡大・縮小、外来種の定着確率の増大、生物間相互作用の変化、生息地改変等の人為影響の増幅、希少種の絶滅確率増大など多くの研究が行われてきた。しかし、温暖化に対する群集全体の生物量の応答についてはよく分かっていない。これまでの研究によれば、一次生産者の生物量は温暖化により増えるとする研究もあれば減ると指摘している研究もあり、結果はまちまちである。また、一次消費者の生物量応答については、あまり研究されていない。さらに、これまでの群集応答の研究は種組成を固定した実験による解析や「平均的な種」を想定した理論研究が中心であり、温暖化に伴う生物種の移入や種間相互作用の変化など、生物過程やその時間スケールを考慮していない。生物種を固定した場合と、地域種プールから適応様式の異なる生物種が環境変化に応じて自由に移入する条件では、ある地点での群集生物量の応答は異なるだろう。とは言え、環境変化に応じた多数の生物種の自由な移入・定着を保証しながら、どうやって短期間で群集生物量の応答を調べることができるだろうか。種プールからいろいろな組み合わせで種を選んで枚挙的な実験・観察を行うのも1つの手であろうが、さまざまな生物過程を内包する自然界のパターンから応答を推測するのも1つの手かもしれない。我が国には平地や高山など多様な湖沼があり、夏季水温は数度から30度と幅広い。そこで、この地理的利点を生かし、植物・動物プランクトン(一次生産者・一次消費者)を対象に群集生物量の温度応答について、経験的解析を行った。本講演では、その結果について報告する。


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