| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) L2-22 (Oral presentation)

海洋原生生物(有鐘繊毛虫)の群集構造に及ぼす餌資源の栄養効果

*風間健宏(東北大院・生命), 占部城太郎(東北大院・生命)

沿岸域に多い有鐘繊毛虫は、細菌や藻類を餌とし、カイアシ類など動物プランクトンの餌となる浮遊性原生動物である。有鐘繊毛虫は類キチン質の殻 (ロリカ)を形成し、ロリカ口径が大きいほど多様な餌を捕集しやすく、また捕食されにくいと考えられている。しかし、有鐘繊毛虫群集の(ロリカ)サイズ組成に及ぼす餌環境と捕食者の相対的な重要性はよくわかっていない。そこで、本研究では、栄養塩を添加することで餌環境を、また大型動物プランクトンの有無により捕食圧を操作する現場培養実験を行った。実験は宮城県塩竈市沿岸の汽水域で2011年に3回 (7月19日、8月22日、9月10日)行った。実験にあたっては有鐘繊毛虫を含む200 µmメッシュで濾過した現場海水を1.25 L容量のボトルに詰め、栄養塩を無添加、又は[N−40 µM・P−2.5 µM]、[N−40 µM・P−2.5 µM・Si−40 µM]、[N−40 µM・P−2.5 µM・Glucose−50 µM]の組み合わせ加え、各々について200 µmメッシュで捕集したカイアシ類を加えた実験区と、加えない対照区を作成した。各ボトルに詰めたプランクトン群集は現場で培養し、2日ないし4日後に回収して個体数を計数した。その結果、栄養塩を添加すると有鐘繊毛虫の密度は全体的に増加したがサイズ組成には大きな変化はみられなかった。一方、カイアシ類を加えたボトルでは、予想に反し、いずれの実験でも中型の20-40 µmの有鐘繊毛虫が増加した。このことから、有鐘繊毛虫の密度は餌環境に影響されるが、サイズ組成はカイアシ類に影響されること、ただし影響は直接の捕食や競争者もしくは中間捕食者の排除といったトップダウン効果によるものではないことが示唆された。


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