| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(口頭発表) M1-02 (Oral presentation)

絶対単為生殖型のDaphnia pulexは日本にもいるのか?

*宋美加(東北大・理),石田聖二(東北大・国際高等研機構),牧野渡(東北大・生命),占部城太郎(東北大・生命)

Daphnia pulex、いわゆる和名ミジンコは通常は単為生殖で繁殖するが、プランクトン生活に不適な環境を乗り越えるため、有性生殖により休眠卵を生産する。本種は北半球に広く分布しているが、いくつかの系統に分かれている。このうち、北米には休眠卵も単為生殖で行う個体が生息している。このような、生活環に有性生殖を持たない系統は絶対単為生殖型と呼ばれており、北米の東海岸に生息する個体群で減数分裂を抑制する1回の突然変異により生じたと考えられている。この系統は、稀に産卵するオス個体が絶対単為生殖形質を伝搬することで絶えることなく維持されており、現在、雄個体による形質伝搬により西海岸のへと分布を広げているという。先に、我々の研究グループでは、このような絶対単為生殖型のD.pulexが東北地域にも生息している可能性を報告した(生態学会第57回大会)。この絶対単為生殖型D.pulexは、我が国に広く分布しているのだろうか?その可能性を調べるため、全国19カ所の池沼でD.pulexを採集し、単為生殖による休眠卵生産能力を調べるとともに、北米個体との系統関係を調べた。その結果、我が国には北米系統と祖先を共有する複数のD.pulex系統が分布しており、多くはオスと交尾をすることなく休眠卵を生産出来ることがわかった。北米の絶対単為生殖型はその形質の標識となる複数のマイクロサテライト遺伝子座があるという。本研究では、我が国に分布する絶対単為生殖型D.pulexの由来を明らかにするため、それらのうち9座の対立遺伝子について調べている。その結果についても報告する。


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