| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-149J (Poster presentation)

富士山北西斜面におけるゴヨウマツ(ヒメコマツ)の分布状況

*別宮(坂田)有紀子,西 教生 (都留文科大学)

富士山北西斜面において標高の異なる5つの調査地: Site-1 (2450 m)、Site-2 (2300 m)、Site-3 (2150 m)、Site-4 (1850 m)、Site-5 (1100 m)を設け、ヒメコマツの分布と個体群構造を検討した。標高の最も高いSite-1のヒメコマツ個体密度は204個体/ 0.5 haと非常に高かったが、全て高さ130 cm以下の稚樹だった。Site-2からSite-5にかけては高さ130 cm以上の個体が存在し、それぞれの調査地における高さ130 cm以上の個体の密度は、23個体/ ha (Site-2)、29個体/ 0.5 ha (Site-3)、10個体/ ha (Site-4)、31個体/ ha (Site-5)であった。胸高直径や繁殖個体数と標高との関係をみると、標高が低いほど大径木が多く、標高が上がるにつれ小径木が多くなる傾向が見られた。また、繁殖個体は低標高ほど多く、高標高ほど少なくなる傾向は認められるものの、有意な相関は認められなかった。標高の低い青木ヶ原では、ほとんどが大径木で後継木となる稚樹が存在しないことから、青木ヶ原だけで見るとヒメコマツの更新はうまくいっていないように見えるが、標高が上がるにつれ稚樹が多くなり、最も高標高の森林限界上部では稚樹バンクが成立していることから、富士山北西斜面全体ではより高標高へと分布の拡大・更新がおこなわれていることが推察された。富士山における本種の高標高への分布の拡大・更新には、ホシガラスによる貯食散布の影響が大きいことが演者らの研究によって明らかになりつつあり、その散布距離は最大8 km (青木ヶ原から5合目まで)、標高差にして1400 mに達する可能性がある。


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