| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-151J (Poster presentation)

チョウ類群集および植物との関係からみた立地環境の異なる水田地域の生息地としての評価の10年間の変化

*不破崇公,大窪久美子,大石善隆(信州大・農)

水田地域における生物多様性の低下が問題となっているが,生物群集の構造や成立条件もいまだ明らかにはされておらず,生物生息地としての評価や保全の手法の確立が急務となっている。そこで本研究では環境指標性の高いチョウ類群集と植物との関係性を用いて,水田地域の生物生息地としての評価手法を確立することを目的とした。本研究はすでに川村らにより2000年から開始されており,今回は約10年が経過した2011年のデータを比較し,本評価手法の有効性の検討を行う。

調査地は長野県上伊那地方の水田地域で,中山間地と市街地において基盤整備の有無が異なる4つの立地条件,計5ヶ所で行った。群集調査はルートセンサス法を用いて約2kmのルートを一定速度で歩き,目撃したチョウ類の種名と個体数を記録した。またチョウの吸蜜行動を目撃した場合,種名や個体数,植物種名,位置を記録した。調査時期は5月上旬から10月下旬の計12回行った。

その結果,2000年(計8回)には出現種が48種であったのに対し,2011年(計12回)では68種が確認された。中山間地と市街地に共通して出現した種ではモンキチョウやモンシロチョウの個体数が多かった。中山間地ではミヤマカラスアゲハやウラギンヒョウモンが,市街地ではヤマトシジミ,ツマグロヒョウモンなどが出現した。調査回数が増えたため,10年前より出現種数が増加した一方で,ミヤマシジミやヤマキチョウなどの出現しなかった種も確認された。多様度指数や環境評価値は10年間で大きな変化はなかった。吸蜜植物との関係では園芸種や帰化植物への吸蜜頻度が全地域で高かった。秋にはイチモンジセセリやヒョウモンチョウ類の多くがソバを吸蜜資源として利用していた。発表では土地利用および農業形態の変化との関係についても結果,考察する予定である。


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