| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-322J (Poster presentation)

都市化が水田性カエル類の多様性に与える影響

*泉澤俊希,丑丸敦史(神戸大・発達)

水田生態系は、陸域と水域が隣接する景観であり、生物多様性の保全について重要な環境である。特に水中と陸地の両方を必要とする両生類の生息地として水田環境の果たす役割は大きい。しかし、近年の都市開発に伴って平野部の水田環境の縮小化・分断化・構造変化が進み、水田に生息する生物の多様性や個体数を大きく減少させている。このような都市部における水田環境の変化はカエル類に対しても大きな影響を与えており、数年前までは普通種であったものが全国各地で絶滅危惧種に指定される事例が複数種で生じている。しかし、カエル類について都市化の影響や都市化への耐性の強さの種間差について十分には明らかになっていない。

本研究ではカエル類5種を対象とし、阪神地区の水田118地点で繁殖期の鳴き声(4段階)の聞き取り、水田の畦畔と水路の状態および林までの最接距離について調査を行った。また、GISを用いて調査水田周囲(半径500mと1km)の土地利用の状態を定量化した。これらのデータを利用し、各種カエルの分布に影響を与える環境要因を解析した。さらに、種ごとに生息予測モデルを構築し、過去の土地利用データを用いて過去のカエル類の分布状況の推定を行った。

調査の結果、種多様性は里山景観が多く残るところや平野部に残存する広い水田景観で高い傾向がみられた。また、カエルの種間で影響を受ける環境要因や範囲に違いが見られた。そこで、影響の受け方の種間差について議論し、多様性の保全に重要な水田環境の条件について検討した。


日本生態学会