| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-193A (Poster presentation)

Rome was not built in a day: time to grasp information on plant feeding of wild Japanese macaques (Macaca fuscata)

*Yamato, T. (Primate Research Institute, Kyoto Univ.), Shiho, F. (Kagoshima Univ.), Sugiura, H. (Wildlife Research Center, Kyoto Univ.), Nakagawa, N. (Kyoto Univ.),

宮城県金華山島では、1984年から現在に至るまで、長期にわたって特定の群れのニホンザル(サル)の食性が記録されてきた。われわれはこの長期データを活用し、サルの食性を把握するために必要な期間の評価を試みた。調査期間と食物リスト(木本植物に限る)の充実度との関係をプロットし、そこにロジスティック式を当てはめることにより定量的に評価した。サルは果実・葉・樹皮・芽などさまざまな部位を食物として利用するため、調査期間とリストの充実度との関係は、採食部位ごとに調べた。

これまでに記録されたすべての食物リストの総数を100%とした場合、全体の95%の採食品目を食物リストに加えるためには、3000-4000時間の調査期間が必要だった。これはおよそ20年分のデータに相当する。いっぽう、主要採食品目(サルが各季節に5%以上の採食時間を示した品目)の95%を食物リストに加えるには、約5000時間(1984-2010の27年分のデータに相当)の調査期間が必要だった。採食品目と調査期間の関係を採食部位ごとにみていくと、樹皮や堅果類の食物リストの把握にはさほど時間はかからなかったが、葉や果実の把握にはより長い調査期間を必要とした。この結果は、島の植生の長期的な変動や、果実類の結実の年変化の影響で、主要食物として利用可能な植物が変わり続けていることを示唆している。

本研究により、サルの食性の把握には数十年規模の調査が必要であることがわかった。サルに限らず、1-2年程度の短期間の調査結果に基づいて動物の食性を評価することに対しては、研究者は慎重になるべきである。


日本生態学会