| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-243J (Poster presentation)

東京都南西部のヌカエビ個体群の生活史

近藤亮,春山宏樹, 永田岳郎, 佐々木岳, *吉川朋子(玉川大・農)

東京都町田市の、流入流出河川のない最深部116cmの人口池(約2500平方メートル)におけるヌカエビ(Paratya improvisa)個体群について、4年間にわたり(2008-2011年)3-11月に定期的に採集を行い繁殖と成長について調査した。

本調査地では、ヌカエビの寿命は約1年で、冬季(11-3月)はほぼ成長せず、春夏(4-8月)に繁殖が行われる。ヌカエビは、気温の高い年には当年群の成長が早く、年内に繁殖に参加するとされているが、2008-2010の調査では、年毎の気温に大差なかったにもかかわらず、2008年と2010年は当年群が繁殖し、2009年は繁殖しなかった。この違いは春(3月)の平均体長によると考えられた。2008年は3月の平均体長は20mm以上であり、ほぼ成長せずに前年群が抱卵し、5月から加入した稚エビ(当年群)が8月には18mmに達し一部は抱卵、この繁殖による稚エビの加入が10-11月に観察された。2009年の春の平均体長は前年より4mmほど小さく、前年群は成長した後抱卵したため、遅くに加入した当年群は抱卵しなかった。2010年は2008年と同様、3月の平均体長が大きく、前年群に加えて当年群も抱卵した。このことから、一定の気温変化の範囲内の場合は、当年群の繁殖は、気温にかかわらず隔年で行われると考えられた。

ところが2011年の調査では、3月の平均体長が小さく、当年群が繁殖しないことが予測されたにもかかわらず当年群の抱卵が観察された。2011年の気温および水底から10cmでの水温は他の年に比べて大差なかったが、震災に伴う電力使用削減により夏期の噴水および循環ポンプが停止した。これによる表層水温の上昇がヌカエビの成長に影響を及ぼした可能性が考えられた。


日本生態学会