| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-245J (Poster presentation)

オオシロアリ野外コロニーのカスト構成と性比

*高津戸香(茨城大・理),林良信(北大・地環研),北出理(茨城大・理)

オオシロアリは、日本では南西諸島の照葉樹林の大きな朽ち木に営巣する大型のシロアリで、オオシロアリ科に属する。本種は他のオオシロアリ科の種と同じく単一材営巣者とされ、コロニーは1つの大きな材を利用し、その材を食べ尽くすとコロニーも終了すると考えられてきた。だが、これまでの野外巣のカスト構成調査で生殖虫が見つからなかったコロニーも少数報告されており、コロニーが複数の材を利用する可能性もある。本研究では、オオシロアリの野外の営巣材全体を採集し、個体を全て取り出してカスト構成と性比を調査するとともに、本種が単一材営巣者であるかを明らかにすることを目指した。

本種の巣は2010年12月に鹿児島県徳之島と奄美大島で採集した。また一部の巣は位置をマッピングした。巣材は採集後すぐに研究室に輸送し、カスト分化抑制のため6℃で保管し、巣材から全ての個体を抽出して70%エタノール中に保存した。その後、(擬職蟻を含む)幼虫、ソルジャー、ニンフ、1・2齢幼虫の各個体数を算出した。さらにソルジャーとニンフの全個体と、無作為に選んだワーカー200個体について雌雄を判別した。

本種の巣内の個体数は、最大で約2万に達し、巣によって大きく異なった。カスト構成はニンフの有無やソルジャー率などに巣間で変異が見られた。幼虫の性は雌雄ほぼ均等であったが、ソルジャーの性比はほぼ全ての巣で雄に偏り、15巣では有意に偏った。ニンフは性比が雌に偏る巣と雄に偏る巣が共に見られた。生殖虫は14巣中の5巣で見つかり、最大193個体であった。生殖虫は全て翅芽を持たない幼形生殖虫であり、性比は常に雌に強く偏っていた。生殖虫や若齢幼虫が少数の巣でしかみられないことと、カスト構成や性比が、近傍に分布する巣で類似する傾向から、本種は1コロニーが複数の巣を利用していると考えられる。


日本生態学会