| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P2-348J (Poster presentation)

小貝川におけるカワヒバリガイ幼生の空間分布: 水利用と幼生動態の関係

*伊藤健二(農環研)

カワヒバリガイは中国原産の付着性淡水二枚貝で、水路や貯水地などの利水施設に侵入・付着してその利用を妨げることが知られている。関東地方では2005年に新たな侵入が確認されて以降、広い範囲に生息域が拡大していることがあきらかになり、一部地域では既にその対策に苦慮している。本種は生活史のほとんどを固い基盤に付着して過ごすが、生活史のごく初期に浮遊生活を送るため、その分布拡大を考えるうえで浮遊幼生の挙動を把握することが重要である。

小貝川は利根川の河口から約80kmの位置で利根川に合流する一級河川であり、利根川下流とその周辺にカワヒバリガイを供給している主要なルートの1つと考えられている(伊藤 2008, 2010)。そこで、小貝川の利根川との合流点から約70kmの範囲を対象に、2011年の7-10月、月一回(7月・8月・9-10月)の頻度でカワヒバリガイの幼生調査を行った。その結果(1)霞ヶ浦から取水した水を小貝川に供給している供給口(分水工)より下流でのみ幼生が採取される(2)小貝川の中-下流に位置する可動堰(春から秋にかけて小貝川の流れをせき止め、周辺の水利用を支える)の周辺で幼生密度が高い、という傾向が得られた。この傾向は小貝川におけるカワヒバリガイの付着密度の空間分布とほぼ一致している。小貝川のカワヒバリガイは、利水施設を経由して霞ヶ浦から移動してきた集団が、堰によって流れの停滞した河川の中で定着・増殖している可能性が高い。


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