| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-040J (Poster presentation)

キナバル山の異なる標高に成育する樹木の木部構造と通水性

*堀井綾子(京都大農),岡田直紀(京都大院農),清野達之(筑波大院生命環境),北山兼弘(京都大院農)

ボルネオ島のキナバル山(標高4095m)は、年間を通して降水量が多いにも関わらず、標高の上昇とともに植物の葉が硬葉化、湾曲化するなど乾性植物に多くみられる特徴が観察される。実際に、キナバル山の高標高域では頻繁に大気の乾燥が起こっていることが観測されている。このことから、キナバル山の高標高域に成育する樹木は、乾燥ストレスを受けているものと考えられる。そこで、本研究ではキナバル山に成育する樹木の木部構造と通水性について、高標高域でおこる乾燥ストレスへの応答を明らかにすることを目的とした。

対象樹種には、調査地の主要林冠構成樹種であり、熱帯山地林(標高1500~2000m)と亜高山林(標高3300m付近)に共に成育するPhyllocladus hypophyllusDrimys piperitaの2組と、同属であるSchima brevifoliaS. wallichiiLeptospermum recurvumL. flavescensの2組、計4組を用いた。調査は、葉のLMAと炭素安定同位体比の測定、材の単位面積当たりの水分通導性を測定、算出した。

その結果、全ての組で高標高域に成育する個体の平均LMAと炭素安定同位体比は、低標高域に成育する個体の平均より大きな値を示した。これらは乾燥に適応的な植物に見られる特徴と一致する。一方、水分通導性では、高標高域に成育する個体の平均が低標高域に成育する個体の平均より小さな値を示すという乾燥適応的な傾向が見られたものの、Drimysのみで逆の傾向が見られた。以上のことから、乾燥ストレスがキナバル山に成育する樹木の木部構造と通水性に影響を与えている可能性が示唆された。


日本生態学会