| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-054J (Poster presentation)

カンボジアのゴム林における樹液流観測

*小林菜花子(名大・水セ),熊谷朝臣(名大・水セ),宮沢良行(九大),松本一穂(琉大),立石麻紀子(九大),吉藤奈津子(京大),Tiva, L. K.(CRRI),Mudd, R.(ハワイ大),Giambelluca, T. W.(ハワイ大),Song, Y.(CRRI)

19世紀末にマレー半島で始まったゴム栽培はインドシナ半島やその周辺に広がり、近年まで増加の一途をたどっている。しかしそれは、現地住民の貴重な現金収入となる一方で、地域の熱・水・炭素循環を大きく変える可能性が指摘されている。この可能性について検討するため、我々はカンボジアのゴム林試験地で熱・水・CO2フラックス観測を行っている。本発表では、2010年から約2年間断続的に得られたゴムノキの樹液流速(Js)の季節変化と、観測の問題点を示す。

Jsはグラニエ法により測定した。対象木10本のうち半数では樹皮下部から0-2cm, 2-4cm, 4-6cmの深さ、もう半数では0-2cmの深さのみで測定を行った。どの深さでも平均Jsは雨季に大きく乾季に小さくなる傾向を示した。また、落葉時に急激に減少する様子も捉えられた。一方で大きな問題も明らかになった。観測されたJsの個体差は非常に大きかったが、ゴム林は同時期に植林されたクローンで構成されており、不自然である。また予想された幹深部でのJsの減衰も見られなかった。この原因として大きな自然温度勾配が疑われる。グラニエ法では幹の加熱部と非加熱部の温度差が加熱だけに由来すると仮定してJsを決定する。通常この仮定は幹を断熱シート等で覆うことで満たされるが、ゴム林でこの処置が不十分なのは、ゴムノキが大きな葉面積を持つにもかかわらず葉の凝集性が高く、日射が林床付近に到達しやすいためと考えられる。自然温度勾配の影響を受けにくいよう観測方法を改良していくことが今後の課題である。


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