| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-058J (Poster presentation)

小川群落保護林に生育する3種のササ(アズマザサ,ミヤコザサ,スズタケ)の生理生態的特性

*青田崇志,金子悠哉,橋本和成,堀良通(茨城大・理)

日本の林床植生において、ササは重要な植生要素となっており、多様性に大きく影響を与えるとともに、物質生産にも大きく寄与している。

阿武隈高地の南端に位置する小川群落保護林において、アズマザサ、ミヤコザサ、スズタケの3種について、林冠の葉の展葉期(5,6月)、繁葉期(7~9月)、落葉期(10~12月)に携帯型光合成測定装置(Li-6400)を用いて、それぞれの当年葉の最大光合成速度と気孔コンダクタンス、葉の全窒素量の測定を行った。林冠は主に、ミズナラ、ブナ、アカシデが優占しており、林床には3種のササが局所的に優占している。アズマザサとミヤコザサは2種が混在している開放地とそれぞれの林床、スズタケは谷沿いの林床を調査区として設けた。

最大光合成速度(PPFD:1800μmol・m-2・s-1、CO2濃度:380μmol・mol-1)は、アズマザサとミヤコザサの開放地では、繁葉期にそれぞれ15.6,12.1μmolCO2・m-2・s-1と最も大きな値を示した。しかし、2種の季節的変化に違いが見られ、ミヤコザサは季節を通して10μmolCO2・m-2・s-1以上の値だったが、アズマザサは展葉期、落葉期はそれぞれ7.34,8.63μmolCO2・m-2・s-1と小さかった。2種の林床では季節を通して似た傾向を示したが、ミヤコザサの方が同程度の気孔コンダクタンスで高い光合成速度を示した。一方、林床のスズタケは、季節を通して光合成速度が展葉期(2.56μmolCO2・m-2・s-1)から落葉期(11.1μmolCO2・m-2・s-1)まで大きく増加し、2種とは異なった傾向を示した。また、同程度の気孔コンダクタンスでは、光合成速度が最も低い値を示したが、光合成速度と全窒素量の関係では、同程度の光合成速度において、最も高い窒素含量を示した。


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