| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-059J (Poster presentation)

異なる樹冠形状をもつブナの葉クラスター分布と光利用戦略~落葉期レーザスキャンによる葉クラスター構造の再現~

*望月貴治,水永博己(静岡大農)

ブナの個葉面積は南から北へ、また太平洋側から日本海側へ連続的に大きくなることが知られている。このような個葉や枝の形態は樹木の光・水の資源利用特性や物理的支持構造と密接な相互関係にある。一方、樹冠全体の葉群分布は物理支持構造の影響を受け、樹冠内の微気象を決定するため、葉群分布構造と枝葉形態もまた密接な関係にある。したがって樹冠内の葉群分布は生育場所に伴う枝葉形態の違いを反映すると予想できる。本研究では、生育場所の違いによる枝葉形態の変異と樹冠内の葉クラスター構造の関係を検証する。さらにブナ樹冠全体の受光効率における枝葉の形態と葉クラスター構造の貢献度を評価する。

調査は、紫尾山(鹿児島県出水市)標高1000m、富士山(静岡県富士宮市)標高1100m、苗場山(新潟県湯沢町)標高900m、苗場山標高1500mのブナ林で行った。レーザ距離計(LDM301)と角度制御ができる回転台(PTU-D46)を組み合わせた可搬型レーザスキャナを林床に設置し、落葉後の小枝を対象としてレーザスキャンした。また苗場山900mでは着葉期に林床と樹冠内の両方にレーザスキャナを設置し枝葉を対象としてスキャンした。対象木は各試験地で林冠を形成しているブナを4本ずつ選んだ。着葉期の林床のみの測定では樹冠下部で多くのレーザが遮られ、樹冠上部ではレーザ数不足から測定できなかったが、落葉後の測定では樹冠全体で測定可能となった。レーザ反射物の点群データの集合度によって着葉枝を判別し、樹冠内の着葉枝分布を推定した。枝葉の測定は、対象木から長さ50㎝の枝葉を樹冠上部、中部、下部から2~3本ずつ採取して行った。さらにリタートラップを対象木周辺に設置し葉面積指数を測定した。

発表では、各試験地の枝葉のサンプルから得た個葉面積や節間長などの形態の性質と樹冠内の着葉枝クラスター分布を比較する。また、それらが各試験地のブナの光利用に及ぼす影響を比較する。


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