| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-091J (Poster presentation)

オオヤマオダマキの花粉親を決める要因は何か

板垣智之,酒井聡樹(東北大・院・生命)

植物の雄雌繁殖成功には、様々な要因が異なる影響を及ぼす。花弁サイズやハーコガミーなど花形質が受粉成功や自家受粉に、ポリネーターの種類や行動が花粉散布距離や他殖種子稔実に影響すると考えられる。

本研究では、どのような要因が雄雌繁殖成功に影響しているかを明らかにすることを目的とし、個体ごと・花ごとの他殖率を調べ、種子ごとの花粉親を推定した。材料は自家和合性多年生草本オオヤマオダマキで、調査は2008・2010年に岩手県の2ヶ所の野外集団で行った。集団内および対象個体の近接個体数・密度、個体ごとに個体サイズ、同時開花数、花ごとに、花サイズ、花粉・胚珠数、開花フェノロジー、集団内および近接個体の数と密度、ポリネーターの訪花数・滞在時間を調べた。他殖率と花粉親の推定のため、花ごとに11遺伝子座のマイクロサテライトマーカーを用いた遺伝型解析を行った。

その結果、個体ごとの他殖率は花序数が少ない個体ほど有意に高かった。花序内の花間に開花の重なりはほとんどないことから、花序が多いと花序間での隣花受粉が増えるためと考えられる。また、開花日が遅いほど他殖率が高かった。花期の進行に伴って近接個体の密度が減少するため、近縁個体との交配が減少すると考えられる。さらに、花あたり種子数が多いと他殖率が低かった。これは自花受粉が保障的に種子生産をもたらしていることを示唆すると考えられる。一方で、ポリネーターの訪花頻度や行動、花形質による雄雌繁殖成功への影響は見られなかった。

このように、個体サイズや各花の開花フェノロジーなどによる雄雌繁殖成功への異なる影響があることがわかった。さらに、それらの影響は花期を通した個体密度の変化などによっても異なることが示唆された。これらの影響が大きいため、花形質は繁殖成功に大きく影響しないのではないか。


日本生態学会