| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-132J (Poster presentation)

Queen Pheromone in Termites

C. Himuro (Okayama Univ.) et al.

アリやハチ、シロアリなど真社会性昆虫の特徴の1つとして、繁殖と労働の分業があげられる。繁殖を担うカーストである女王は、「女王フェロモン」を分泌することで、他の雌個体が繁殖することを抑え、女王としての地位を確固たるものとしている。このような女王フェロモンは、アリやハチでは既に発見され研究されていたが、シロアリでは我々が世界で初めてその同定に成功した(Matsuura et al. 2010)。この際、材料として用いたのが下等シロアリの1種であるヤマトシロアリReticulitermes speratusであり、2種類の揮発性物質(2メチル1ブタノール、nブチルnブチレート)で構成されていた。また、Himuro et al.(2011)は、系統的に離れた高等シロアリの1種タカサゴシロアリNasutitermes takasagoensisを用いて、化学分析による女王フェロモンの特定に取り組んだ結果、1種類の女王特異的な揮発性物質(フェニルエタノール)が検出された。この揮発性物質はヤマトで発見されたものとは全く異なる物質であった。そこで、ヤマトと近縁種であるヴァージニアシロアリR. virginicusを用いて、化学分析による女王フェロモンの特定に取り組んだ結果、ヤマトやタカサゴで発見された物質とは異なった4種類の女王特異的な揮発性物質が検出された。このことからシロアリの女王フェロモンは種ごとに独立して進化、獲得されたものと考えられた。


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