| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-140J (Poster presentation)

進化ゲーム理論において有限かつ十分に大きい個体群に侵入できる個体の形質

*高橋弘明,渡辺 守(筑波大・院・生命環境)

進化ゲーム理論は頻度依存選択による形質(戦略)の進化を扱う枠組みであり、進化的に安定な戦略(ESS)やNIS(neighborhood invader strategy)などの概念を基礎としている。ここで、NISとは、その戦略に似ている他の戦略をもつ集団に侵入可能な戦略と定義されている。これら2つの戦略の安定性基準は、集団の個体数が無限であると仮定しているため、有限集団においては新たな安定性基準が必要であった。それらの基準のうち、large population ESSは十分大きな有限集団における進化的安定戦略といえるが、この規模の集団サイズにおいては、NISのような他の戦略集団へ侵入可能な戦略の基準は確立されていない。本研究では、大きな有限集団において、他の戦略集団へ侵入可能な戦略であるlarge population NISを、個体の対戦による利得と固定確率(侵入した1個体が集団中を占める確率)の2通りの基準で定義し、これらと他の進化的安定性基準との関連を明らかにすることを目的とした。その結果、利得に基づいたlarge population NISは同時にlarge population ESSの基準もみたすことがわかった。すなわち、近くの他の戦略集団に侵入可能な戦略は、同時に、他のどの戦略の侵入に対しても頑健な戦略であったのである。また、large population ESSが混合戦略ならば、他のどの戦略集団に対しても侵入可能であった。これらの結果は、無限集団の進化ゲームにおけるESSとNISの関係性に類似しており、このような進化的安定性と侵入可能性の関係は大きな有限集団においても成立していた。一方、固定確率によって定義したlarge population NISは、利得に基づいた基準とは対応せず、より強い基準であることが示唆された。


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