| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-175J (Poster presentation)

分布域全体におけるホオノキの遺伝的多様性の分布

*川瀬大樹(名大院生農), 村西周平(名大院生農), 玉木一郎(岐阜県森林文ア),鈴木節子(森林総研),戸丸信弘(名大院生農)

ホオノキは日本全国の温帯性落葉広葉樹林に低頻度で出現する広域分布種であり、その葉、樹皮、木材が利用される有用樹種である。本研究では、ホオノキ種内の遺伝的多様性の分布と集団遺伝構造を明らかにするために、マイクロサテライト12遺伝子座をマーカーとして、分布域全体から選定した41集団について、集団あたり平均28.8個体の遺伝子型を決定して、集団遺伝学的解析を行った。その結果、いずれの集団においても近交係数が高く、北東集団ほど高くなる傾向が見られた。この結果は近親交配の頻度が高いことと、各地域の訪花昆虫相が異なることによる他家受粉への影響が反映されている可能性が考えられる。

一方、遺伝的多様性の指標である遺伝子多様度やアレリックリッチネスは日本の北東集団ほど減少していく地理的な勾配が検出され、特に北海道の集団は全般的に遺伝的多様性が低かった。これらの結果は、過去の気候変動に伴うホオノキ集団の南の地域からの分布拡大の可能性を示唆する。マンテル検定や系統樹解析からは地理的に近い集団ほど、遺伝的組成の類似性は高く、地域的にまとまる構造を示した。祖先集団数の推定を行った結果、最適クラスター数は2であり、各集団におけるクラスターの組成は緯度経度に沿って連続的に変化していた。ホオノキの種内には、大きく北東(北海道、東北地方)グループと南西グル―プ(中部、近畿、四国、九州地方)に分かれる集団遺伝構造が存在することが明らかになった。


日本生態学会