| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-183J (Poster presentation)

水田の植物群集の多様性を保全するためにはどんな畦畔が必要か

*岡本奈保子,松井淳(奈良教育大),今村彰生(大阪市立自然史博物館)

京都府亀岡市曽我部町は、全国で急速に消滅しつつある伝統的畦畔が残存する水田地帯である。この伝統的畦畔の構造に着目すると、石を組んで作られた石組畦と土を盛って作られた盛土畦の2種類がある。さらに、畦畔は管理方法の違う5つの部位(前畦、平坦面、畦畔草地、小溝、中畦)に分けることができ(梅本、山口 1997)、その管理の相違により植物にとって異なる立地を構成する。特に、排水用の溝である小溝、小溝と耕作地の境である中畦の2つの部位が付随する構造は曽我部町の畦畔の特徴である。

この地域においても、大規模な国営農地基盤整備事業の計画があり、この整備が完了することで亀岡市からかなりの伝統的畦畔が消失すると考えられる。

そこで、本研究は圃場整備前後で畦畔植生を比較し、畦条件(石組畦、盛土畦、圃場整備後)ごとで植物種組成の特徴を明らかにし、それぞれの畦条件が水田の植物群集の多様性にどのように寄与しているか検討する。

曽我部町で2009年7月から2011年8月の間に石組畦9本、盛土畦6本を調査した。畦1本当たり長さ10mに出現したすべての植物種を記録した。あわせて畦の環境条件(高さ、斜度、畦内での部位など)を記録測定した。比較対象として2010年6月に圃場整備の完了地である亀岡市千歳町の畦畔5本について、同様の調査をした。

全20本の畦で記録した植物は49科159種であった。内訳は、圃場整備前の石組畦で127種、盛土畦で90種、圃場整備後の畦で74種であった。出現頻度ごとの種数を見ると、石組畦と盛土畦では、畦1本にのみ出現する種数が最も多く、出現頻度が高いほど種数が減少した。圃場整備後では、どの出現頻度でも種数に明確な差はなかった。


日本生態学会