| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-257J (Poster presentation)

ナラ類集団枯損後の植生管理が実生の発生消長に及ぼす影響

*山瀬敬太郎,伊東康人(兵庫農技総セ)

ナラ類集団枯損に伴い、林冠層が欠如して林分構造が不安定になり、ニホンジカの摂食圧も重なって、放置すると回復が困難になることが懸念される。そこで本研究では、兵庫県内の集団枯損が発生したコナラ二次林において、出現種の被度に着目して被害林分を分類するとともに、植生管理が林冠を構成する高木樹種の発生消長に及ぼす影響を解析し、安定した林分構造を回復させる管理技術の検討を行った。

最初に、枯損後2~3年が経過した22林分で植物社会学的調査を実施した。各出現種の階層別被度(%)を用いてTWINSPANの3回目の分割により、高木残存型、亜高木・低木型、林床被覆型(ネザサ群落)、林床被覆型(イワヒメワラビ群落)の4タイプに分類された。林冠層を欠く林床被覆型では、高木樹種が草本層にみられるものの、低木層や草本層には、低木樹種や多年生植物が高木残存型や亜高木・低木型と比較して多くみられた。つぎに、ニホンジカの影響がみられた林床被覆型(イワヒメワラビ群落)において、草本層の刈り取り(F)、低木層の伐採(S)と防鹿柵の設置(H)を行った。1成長期間の高木樹種の増加率を応答変数、植生管理の組合せ(F+S+H、F+H、F、S+H、H、Cont.の6工種)を説明変数とし、GLM回帰と6工種の比較を行ったところ、高木樹種の増加率はF+S+H>F=Cont.であり、3つの管理を組み合わせることで、新規高木樹種の個体数は有意に多くなった。

以上のことから、ナラ類集団枯損後の被害林分は4タイプに分類することができ、林冠層の欠如が著しい林床被覆型で林分構造を回復させるには、ニホンジカ摂食圧を排除するとともに、高木樹種の成長を阻害する可能性がある低木樹種や多年生植物を刈り取ることが重要であることが示唆された。


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