| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-261J (Poster presentation)

撹乱を受けた群馬県玉原湿原の植生の回復状況

*秋葉知律・福嶋司(東京農工大・院・農)・井上香世子・吉田青子(玉原高原の自然を守り育てる会)

玉原湿原は、群馬県沼田市の武尊山麓標高1100m程に位置する中間湿原である。植生はミズギク‐ヌマガヤ群集が広く分布している。しかし、本湿原では一部地域でハイイヌツゲやヌマガヤ等が繁茂し、植物種組成の単純な群落が分布していた。この群落は、過去に行われた排水路の掘削や木道敷設による地下水位の低下により分布拡大した。このように変質した湿原を復元しようと、1995年から排水路への堰設置やハイイヌツゲの刈取り等の活動が行われた。本研究は、復元活動実施前の調査結果と活動実施後10数年が経過した現在の調査結果とを比較し、玉原湿原での植生の復元状況の評価、及び復元活動の効果の検証を行うことを目的とする。

比較には1989~92年及び2008~11年の植生図・植生調査資料・地下水位調査資料、ヨシのシュート数の調査資料を用いた。1989年時点での湿原の群落分布パターンから湿原を10地区に細分し、排水路・木道の影響が著しかった5地区の変化に特に着目しつつ、各地区の植生・環境の変化を調べ、それぞれの変化要因について考察した。

影響が著しかった5地区とも種組成の単純な群落群の面積は減少し、他の群落へと置き換わる傾向にあったが、群落変化の方向や進度に差が見られた。変化傾向としては、(1)湿原植物を含む群落へと変化する傾向、(2)高茎草本を含む群落へと変化する傾向の2パターンに大きく分けられた。(1)のパターンを示した3地区においては、排水路への堰設置等が貢献していると考えられた。この3地区の変化を比較すると、地下水位の低下期間が短い地区ほど群落変化の進度が大きいことが示唆された。(2)のパターンを示した地区は、約20年間で年間平均水位が低下しており、ヨシの著しい増加が起きていたことから、土壌の流入による富栄養化が起きていることが考えられた。


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