| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-304J (Poster presentation)

北上山地におけるカラマツのリターフォール年変動と年輪成長の関係

*橋本徹, 池田重人,三浦覚,相澤州平,岡本透,志知幸治(森林総研)

リターフォールは土壌に炭素を供給する主要経路の一つであり、森林生態系内での炭素循環を駆動する上で重要な役割を果たす。同化産物の生産器官であると同時に同化産物の配分先でもある葉の量は、葉リターフォールと密接に関係する。そのため、葉リターフォール量は、別の同化産物配分先である幹成長とも関連していると考えられる。葉リターフォール量には様々な立地環境要因が影響するが、気象要因は主要な要因の1つと考えられる。そこで、北上山地のカラマツ林分を対象に、その葉リターフォール量の年変動と年輪成長の関係に与える気象要因の影響を調べた。

調査は岩手県姫神山のカラマツ人工林で行った。1965年に植栽されたカラマツ林分に5基のリタートラップを設置し、5月から11月まで毎月1回リターを回収し、葉、枝、その他に分け、乾燥重量を測定した。また、間伐された木5本の根株から円盤を採取し、スキャンした年輪から年輪幅を読み取った。気象データは、岩手県好摩のアメダスデータを用いた。

カラマツの葉リターフォール量と年輪幅の年変動には有意な相関関係があり、時間的なずれはなかった。また、これらの年変動は、前年夏期の気温と有意な相関があり、特に1993年の冷夏の影響で翌年のリターフォール量、年輪幅が顕著に減少していた。一方、降水量や日照時間の影響は見られなかった。以上の結果から、カラマツのリターフォール量の年変動は幹成長と時間のずれがなく、同期しており、それらは前年夏期の気温の影響を受けていることがわかった。


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