| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-315J (Poster presentation)

アラスカ北極圏陸上生態系の土壌呼吸特性解析

*内海真生(筑波大・生命環境系),近藤美由紀(国環研・環境計測研究セ),安立美奈子(国環研・CGER),天野(佐藤)千恵(筑波大院・生命環境),内田昌男(国環研・環境計測研究セ)

北極域土壌圏には、炭素が土壌有機物として膨大な量貯蔵されており、現時点では、低温および高い土壌含水率に伴う嫌気的環境条件にあることでその分解が抑制されている。北極圏およびその周辺地域が近未来の気候変動下で温室効果ガス放出のホットスポットとして機能する可能性は高く、その炭素動態モデルの開発は緊急かつ極めて重要な課題である。我々はH22年度より、北極高緯度域土壌有機炭素の中・長期的な動態をシミュレートするモデルの開発とその高精度化を目標に、現地観測とモデル研究を並行実施する研究を開始した。研究対象であるアラスカ北極圏において2010、2011年の夏期(8月~9月)、Fairbanksから北極海に面したPrudhoe Bayまでの約1,000 kmの縦断面で、気候区分と植生の違いを元に調査点を設定した他、近年北極圏で頻発している森林火災跡地も調査点に設定し、ポータブル土壌呼吸測定装置を用いた土壌呼吸速度の測定を行った。また、メタンフラックス測定用ガス試料ならびに土壌採取も行った。各調査点の平均土壌呼吸速度は0.07 ~0.42 g CO2/m2/hで、ツンドラや火災跡地の土壌呼吸速度のばらつきが大きかった。また、ほぼ全ての観測点で、表面植生の違いによるばらつきはあるものの、地下5 cm地温と土壌呼吸速度との間に正の相関関係が認められた。メタンフラックス測定から、タイガ林の他、森林火災跡地がメタンシンクとして働いている結果が得られた。

※本研究は地球環境総合推進費研究課題「北極高緯度土壌圏における近未来温暖化影響予測の高精度化に向けた観測及びモデル開発研究」の助成を受け実施した。


日本生態学会