| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


一般講演(ポスター発表) P3-HS24J (Poster presentation)

日本産イガイ(Mytilus corscus)に含まれる天然真珠の形成状況とその環境要因

辻貴行, 廣瀬将太郎, 宇藤由紀, 黒田鈴捺, 呉健作, 西村勇, 武田真姫 (立命館宇治中学校・高等学校)

私たちは岡山県笠岡市真鍋島において,採取したイガイの中からたくさんの天然真珠を発見した.イガイ真珠は小型でいびつな形のものが多く,1個体の中でも多様な色の真珠が形成されていた.真珠は外套膜直下だけでなく,貝柱の中からも見つかった.真珠の中心には砂粒などの核は見られなかった.そこで,イガイ天然真珠の特徴を記載し,他の産地のイガイとその生息環境を比較して真珠の形成要因を明らかにすることを目的として研究を行った.イガイは,岡山県真鍋島と鳥取県鳥取港で採集した個体を用いた.

その結果,真鍋島のイガイでは殻長10cm以上の個体の50%以上に真珠が形成されており,1個体に多くの真珠が形成される傾向がみられた.それに対して,鳥取県産のイガイにも天然真珠が形成されていたが,その頻度は低く,殻長10cm以上の個体で真珠を含む個体は5%以下だった.

生息環境を比較すると,真鍋島・鳥取の両方とも,固着生物が多く付着していたが,その生物相は異なっていた.これらの結果から,イガイの天然真珠は,砂粒由来の天然真珠とは異なり,固着生物の穿孔によって外套膜上皮細胞が軟体部の中に陥入した結果,無核の天然真珠が多数形成されたと考えられる.


日本生態学会