| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


シンポジウム S04-2 (Lecture in Symposium/Workshop)

食物連鎖上位の生物の絶滅パターン-特に恐竜とアンモナイトを中心に-

高橋昭紀(早稲田大・理工研)

鳥類を除いた恐竜類とアンモナイト類の白亜紀末の絶滅パターンをレビューする.非鳥型恐竜類もアンモナイト類も,低次の生産者に比べて化石産出種数が多くない.そのため,シニョール・リップス効果(化石産出頻度の違いが原因で,突発的絶滅が漸進的絶滅に見える現象)が常に問題となり,絶滅パターンに関しては,議論が絶えなかった.恐竜類は,1980年代には,白亜紀末に向かって漸進的に絶滅していったという主張もあったが,その後,2000年代前半に,シニョール・リップス効果を克服するだけの膨大な量の標本を使って統計解析がなされ,白亜紀/古第三紀境界(K/Pg境界)において,突発的に絶滅したとする見解が主流となった.近年のデータベースを使った多様性変動解析の研究においても,それを支持する結果が多く報告されている.アンモナイト類の絶滅パターンに関しては,研究者によって見解が分かれている.スペインのK/Pg境界セクションでは,アンモナイト類7属8種が境界直下まで生存していたことが確認され,アンモナイト類も突発的に絶滅したとする主張がある.一方で,日本産アンモナイト類の種多様性変動を解析したデータベース論文では,およそ8,500万年前頃をピークとして,その後,白亜紀末に向かって多様性が漸減している.ただし,日本の白亜系を精査すると,8,500万年前ごろには海成層の露出面積が非常に大きいのに対して,白亜紀末ごろは著しく狭いため,上述した漸減パターンは見かけ上である可能性も否定できない.また,アンモナイト類に関しては,K/Pg境界付近の化石産出種数が少ないという問題もあり,シニョール・リップス効果を克服できていない可能性がある.いずれにせよ,光合成生物の絶滅パターンを見る限り,多くの大型動物の絶滅原因は,衝突に伴う光合成停止による食物連鎖の崩壊であったことが強く示唆される.


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