| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


シンポジウム S09-4 (Lecture in Symposium/Workshop)

生態系ごとの生物多様性評価地図の作成

戸田光彦(自然環境研)

生物多様性評価地図の評価対象は国土全体の陸域とし、空間精度は20万分の1程度を想定して作成した。評価に当たっては、全国を概ね同様の精度で悉皆的な評価を行うこととし、全国ほぼ均一な精度で調査された既存の自然環境、生物分布、社会環境に関するデータを使用して評価した。評価地図はその性格から4区分し、合計40タイトルを作成した。4区分ごとの主な評価地図は次の通りである。

1.生物多様性の状態を示す地図:森林の連続性、様々な環境を含む里地里山地域、緑の多い住宅地、河川の連続性、絶滅危惧種の集中分布地域 日本固有種の集中分布地域 等

2.生物多様性の危機の状況を示す地図:減少要因別の絶滅危惧種の種数分布、過去の開発により消失した生態系、人口減少が予測される地域、ニホンジカの分布拡大による生態系への影響が懸念される地域、アライグマによる生態系への影響が懸念される地域 等

3.保全に向けた対策及び取組の状況等を示す地図:既存の保護地域、自然保護団体の分布状況 等

4.保全の優先順位を示す地図:効率よく保護しうる絶滅危惧種の集中分布地域、保護地域と絶滅危惧種の集中分布地域とのギャップ 等。

これらの地図は、巨視的にみた我が国の生物多様性の状況を示す基礎的な情報のひとつとして、自然環境行政における保全や普及啓発等への活用が期待される。一方で、元になるデータの情報量が限られており、更新年度が古いものがあること、地域的に整備されている詳細かつ最新のデータを取り込めていないこと、個別の開発に対応できる2万5千分の1程度のスケールには対応していないこと、各地域で求められる保全方策がストレートに表現されていないこと等の課題が残されている。

地図の作成と並行して、地域(市町村など)ごとの現状及び生物多様性を維持する上での配慮事項をまとめたカルテを作成し、評価地図とともに公表の予定である。


日本生態学会