| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


企画集会 T03-5 (Lecture in Symposium/Workshop)

土壌環境から考える二次草原の再生:わかってきた野草類の土壌環境適性

*平舘俊太郎, 森田沙綾香, 小柳知代, 楠本良延(農業環境技術研究所)

植物が正常に生育するためには、少なくとも14種類の無機必須元素を過不足なく土壌から吸収する必要がある。これら無機元素が植物に吸収されるかどうかは、その土壌中における存在量よりもその存在形態、言い換えれば土壌の化学的特性に依存する場合が多い。加えて、土壌はAlイオンなど植物の生育を阻害する元素の供給源ともなりうる。一方で、植物が必要とする無機必須元素の量や根による吸収能力、およびAlイオンに対する耐性などは、植物の種類によって様々である。このことは、土壌の化学的特性は、その上に成立する植生に影響を及ぼしうる非常に大きな要因を含んでいる可能性を示唆している。日本の土壌環境は、諸外国に比較して、酸性が強い、狭い地域に多様な土壌がひしめくように分布している、火山灰の影響を受けている、などの点で際立った特徴を持っている。従って日本固有の植物や古い時代に日本に定着した植物は、この特徴的な土壌環境に適応している可能性が高い。たとえば、アジサイやソバはAlを体内で解毒する機能を持っており、このことがこれらの植物が強酸性土壌でも生育できるメカニズムと考えられる。また、植物のリン吸収能力は様々であり、リン酸が難溶化する土壌環境において植物が土壌からリンを獲得するために、根の形態を変化させる植物、低濃度のリン酸でも吸収できるチャンネルを根に発達させる植物、菌根菌と共生するする植物などが知られている。著者らは、望ましい生物多様性を支える草原の再生を目指して、土壌特性と草原生植物の分布の関係、草原生植物の植物栄養学的特性の解明、土壌の化学的特性を制御によって植生を制御する手法の開発などに取り組んでいる。本発表では、これらの研究成果を紹介しつつ、土壌環境の面から二次草原の再生を議論する。


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