| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


企画集会 T04-2 (Lecture in Symposium/Workshop)

陸生鳥類の種多様性と景観の異質性 国土スケールでの評価

*小松 功武 (東京大学・農), 楠本 良延 (農業環境技術研究所), 高川 晋一 (日本自然保護協会)

現在、農業の大規模集約化や森林伐採など人為による環境改変による生物多様性の低下が世界的に問題視されている。人為的環境改変による生物多様性の低下は様々なスケールで引き起こされる。なかでも、景観スケールにおける景観要素の構成や形状の変化が近年特に注目を集めている。一般に景観の異質性は生物多様性に正の影響を与えるといわれているが、異質性の指標や空間スケール、気候帯、対象種群などの違いにより景観異質性が生物に与える影響が異なるという指摘もある。また景観の異質性と生物多様性の関係を対象とした先行研究の対象地域は西ヨーロッパに偏っておりアジアを対象地域とした知見はいまだ数少ない。

そこで本研究では、日本全域を対象として環境指標種群かつ食物網上位種群である鳥類を対象に景観の異質性が与える影響について評価した。日本は国土が南北に長く、異なる気候帯のデータを得ることができるため、気候帯ごとに与える影響がどのように異なるのかを検証することができる。鳥相データは環境省が主導する長期環境観測であるモニタリングサイト1000の里地・里山、森林・草原調査における鳥類のラインセンサスデータを用いた。景観の異質性には構成の異質性と形状の異質性の二種類があるといわれており、それぞれの異質性の指標が多様性に与える影響の違いを検証するため、景観の組成の異質性の指標として非農地の面積割合とShannonの多様度指数、形状の異質性としてエッジ密度、フラクタル次元を用いた。鳥類の個体数と種数を目的変数に、調査ラインから発生させたバッファー内の景観要素と異質性の指標を説明変数とし、解析を行った。この解析結果をもとに日本において、景観の異質性が生物多様性にどのような影響を与えるのか、また気候帯ごとに与える影響がどのように異なるのか考察する。


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