| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第59回全国大会 (2012年3月,大津) 講演要旨
ESJ59/EAFES5 Abstract


企画集会 T20-2 (Lecture in Symposium/Workshop)

気候変動に伴うお花畑消失のメカニズム-大雪山ハクサンイチゲ個体群を事例として-

*川合由加, 工藤岳(北大)

近年、北海道大雪山系の雪潤草原では湿性お花畑の減少が報告されており、その原因として雪解けの早期化に伴う土壌乾燥化が有力視されている。さらに、雪解け傾度に沿った土壌水分条件の変化に伴い、広茎草本の分布域が移動している可能性がある。そこで、雪潤草原の代表的な種であるハクサンイチゲを用いて、雪解けの早期化にともなう個体群動態を追跡した。(1) 雪解けの早期化は土壌水分を低下させているのか?そして、(2) 雪解け時期の違いは個体群間の開花サイズ、繁殖率、サイズ構成を変化させているのか?を明らかにすることにより、雪解け時期の変化に伴うハクサンイチゲの個体群衰退のメカニズムを解明することを目的とした。

雪解けの早い場所から遅い場所にかけて選定したE、M、Lの3プロットに1x1mの方形区を3つ設置した。方形区内のハクサンイチゲ全個体をマーキングし、2009年から2011年にかけて葉数、繁殖の有無(繁殖個体は花数)の追跡調査を行い、推移行列モデルの作成と解析を行った。同時に土壌水分、葉の気孔伝導度の季節変化も測定した。

土壌水分・気孔伝導度ともに季節を通じてEプロットで最も低かった。平均個体群成長率はEプロットで最も低い1.02、Lプロットで1.07、Mプロットでは最も高い1.08であった。雪解けの遅いLプロットでは個体群密度が最も低いにも関わらず繁殖個体の占める割合は13%と最も高かった。一方で、雪解けの早いEプロットでは小さいサイズへの偏向があり、全体に占める繁殖個体の割合が約3%と低かった。推移行列の解析結果から、Eプロットの個体群成長率の低さは、繁殖サイズへの移行率の低さと、サイズの後退率の高さに起因していることがわかった。繁殖個体数の少なさが実生供給を低下させて個体群の衰退を引き起こしており、その原因として雪解けの早期化にともなう乾燥ストレスの増大が考えられた。


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