| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) C2-24 (Oral presentation)

水温上昇がサクラマスの生活史と個体群動態に及ぼす影響

*森田健太郎(北水研),玉手剛(東北水研),黒木真理(東大総博),永沢亨(北水研)

地球温暖化に伴う気温上昇が動物個体群におよぼす影響の予測について非常に多くの研究がある。一般には,対象種に特異的な適温度帯の変化から,分布域や個体数の変化を予測したものが多い。しかし,変温動物である魚類などでは,水温は全ての生理現象を左右する環境因子であり,生活史過程(成熟年齢,回遊行動など)の変化を介しても個体群動態に大きく影響すると考えられる。

本研究では,北日本の漁業対象種であるサクラマスを例に,北海道から鳥取県までの22個体群を対象とした野外調査に基づき水温と生活史過程の関係をモデル化し,温暖化に伴う水温の上昇がサクラマスの個体群動態に及ぼす影響について数値シミュレーションした。

サクラマスの生活史には,川で一生を過ごす残留型(通称ヤマメ)と海へ回遊する降海型の二型がある。野外調査の結果,川で生まれた稚魚は1+歳で海に下るものが大半であるが,水温が低い川では2+歳で降海する個体が一定の割合で出現することが明らかになった。また,降海年齢が2+歳の個体の割合は,降海時より海洋生活期を終えて河川に産卵遡上したサクラマス親魚の方が高く,2+歳で降海した方が海洋での相対的な生存率が高いことが示唆された。一方,雄は海へ下らずに0+で性成熟して残留型となる個体が多く出現し,雄の残留型の出現率は水温が高い川ほど高くなった。

これらの野外における生活史過程と水温の関係を考慮したサクラマスの生活史モデルを構築し,個体群動態の数値シミュレーションを行った。その結果,水温が上昇するに従い,①残留型となる雄の割合が増えるため漁業対象となる降海型サクラマスの資源量が減る,②降海年齢が単純化するため環境確率性の影響を受けやすくなりサクラマスの資源変動の幅が増加する(例:極端な不漁年が生じる等),が予測された。


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