| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第60回全国大会 (2013年3月,静岡) 講演要旨
ESJ60 Abstract


一般講演(口頭発表) D2-17 (Oral presentation)

首の運動と映像記録からみる潜水性海鳥の採餌行動

*小暮ゆきひさ, 佐藤克文(東大・大海研), Francis Daunt (CEH, UK), 綿貫豊(北大・水産)

ペリカン目ウ科の海鳥であるヨーロッパヒメウは、足の水掻きにより最大40メートル程潜水し底性魚類を捕食する。デジタルスチルカメラをヒメウに装着したこれまでの研究から、砂底ではイカナゴを捕獲し岩礁域ではギンポを捕獲するなど、複数の採餌環境でそれぞれ異なる餌種を利用していることが明らかになっている。しかし、デジタルスチルカメラのサイズ(質量72g、直径21 mm、長さ122 mm)では、体重2 kg前後のヨーロッパヒメウに他の行動記録計と同時に装着する事が難しい上、撮影間隔が最短4秒と摂餌の瞬間を捉える事が難しかった。本調査ではスコットランド・メイ島にて2012年の繁殖期間中、ヨーロッパヒメウの親鳥10羽に、小型ビデオロガー(質量41g、直径22 mm、長さ80 mm)と小型加速度記録計(質量9g、直径12 mm、長さ45 mm)を背中と首に同時に装着した。ビデオロガーの記録時間が1.5時間と短く、また加速度記録計の動作不良もあり、4個体からはデータが得られなかったが、残り6羽のうち5羽よりそれぞれ1回の採餌旅行中の全潜水について、1羽では採餌旅行中の一部の潜水について、映像および加速度記録が得られ、海中で餌の魚を捕獲する瞬間の動きを捉えることが出来た。映像には砂底や岩礁等、複数の採餌環境を利用している様子が映っていたが、そのいずれの環境においても魚を捕らえる瞬間には、8-10 Hzの一定の周波数で首を前後に動かしていた。砂底でイカナゴを採餌する場合には1回の潜水中に複数回の首の動きが見られるのに対して、岩礁域でギンポやカサゴなどを捕食する場合には海底で飲み込まずに、捉えた魚をくわえたまま浮上し水面にて嚥下していた。このことから岩礁域に比べて砂底の方がより効率よく捕食できる採餌環境であると考えられる。


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